小さな成功は、これからの治療人生においては大きな自信につながる。〜押川先生の励まし〜

小さな成功は、これからの治療人生においては大きな自信につながる。〜押川先生の励まし〜

今朝の押川先生のブログの続きです。

また小さな成功は、小さな自信獲得を意味し、これを積み重ねることが、これからの治療人生においては大きな自信再び自分の世界を広げられる事につながるはずです。

いつものように結論から書きます。

がん治療では、慎重になりすぎるとあとで失敗する

小さな失敗を避けすぎると、大きな失敗をする

小さな失敗を積み重ねることで、自分の進むべき正しい方向が定まってくる

ということです。

よく、がん患者さんや家族が言うことに

よくなってから、退院したい

自信がつくまで入院させておいてほしい

なるべく無理させないようにしている

家の周囲だけで、あまり遠出しないようにしている

周りから無理するなと言われる

といったものがあります。

一見もっともらしい感じもしますが、実は非常に危険な考え方です。

いつも読んでいただいている当方のブログ読者には、ピンときたと思いますが、その理由を解説します。

-------------ここからが、ブログにさらに追加した文章になります---------

がんは簡単に言うとおおきないぼで、周囲組織への物理的圧迫にて痛みや症状がでます。

いぼが安静で縮小するか?するはずがない

痛みや症状は、問題点を教えてくれる大事な体の危険信号ですが、原因がわかっているなら、医療用麻薬を使って痛みを抑えてでも動くべき。

なぜか?

安静にしていてもがんにとっては、痛くもかゆくもないけど、全身の筋肉に与える影響は甚大だからです。

人は40歳を過ぎると、一歳年をとるごとに、平均1ずつ筋肉量や筋力が低下することを以前書きました。

では丸一日動かないでいるとどうなるのでしょう?

トイレと食事以外は横になったままで一日を過ごすと、実はそれだけで1の筋肉量筋力が低下してしまいます。

2週間の安静では、恐ろしいことに足の筋力は15〜30歳も老化するのです。知っていましたか?

例えば、内臓のがんなのに、どうして足腰が弱ってしまうのか?

これはがんが原因ではなく、過度の安静が引き起こす医原性(医療が原因という意味)廃用症候群とも言われているものです。

病的骨折や、手術直後などの例外を除いては、がん治療に安静が必要な場面は、ほとんどありません。

つまり、昔からいわれている病気になったらまず安静という無条件の習慣が、一般人のあたまの中に染みこんでしまっている弊害と言って良いでしょう。

がんという病気は、動いてみて、本当に問題があれば、痛みなどの症状として自分で自分の状態がわかります。

逆に言うと、末期状態まで病院受診しなかったほど無症状だった場合もあり得ます。これはがんの占拠部位が、運良く(悪く?)神経や臓器機能障害を起こす場所になかったのでしょう。

逆に考えると、運動して、特に支障がなかったら、どんどん動いて良いと言うことでもあります。

場合によっては、医療用麻薬を使ってでも、多少の運動はすべきなのです。痛いから動かないというのは、長期的に見るとかなりよくないです。

もちろん脊椎や大腿骨など、体重がかかる骨に転移がある場合は例外です。

しかし、そういったものがないときは、自分で多少無理をしても良いのです。

無理して翌日以降きつく感じることもあるでしょう。そんなときは、少し強度を抑えた運動をしてください。

用心して、あまり体に負荷をかけないことで、気がつかないうちに、どんどん筋力、持久力が低下していることに、みな無頓着なのです(医療者でさえも)。

これは体力のある人ほど副作用が少なく、治療効果が出やすいという抗がん剤治療の常識の真反対の方向へ突き進むことを意味します。

あるいは、がんの進行があれば、ちょっとした無理で、がん症状の進行が早期に発見できるかもしれません。

例えば、ちょっと丘に登っただけで、いつの間にか息が上がるようになった場合、がんによる胸水貯留や貧血の進行などが原因のことがあります。

普段より運動量を増やすと、早期にがんの進行に気付く可能性が高まります。

そのことを主治医に訴えれば、検査して何が原因か早く特定して、対策を取れるかもしれません。

良くある勘違いは、レントゲン検査や血液検査で何でもわかるという誤解です。

これらの検査はそれほど頻繁するわけにはいかないし、探知できないがん進行所見も少なくありません。

例えば四肢の骨転移や下肢のむくみなどは守備範囲外で、最初は本人の自覚症状が手がかりです。

また自信がつくまで入院させておいてほしいという安全策は、ただでさえ、世界が狭くなっているがん患者さんに追い打ちをかけ、行動範囲が狭くなる、あるいは自信を失わせることにつながります。

つまり小さな失敗を恐れるあまり、全体としては大きな失敗を犯そうとしていることに気がつかないわけです。

小さなチャレンジを繰り返せば、どのあたりが限界か見えてきます。あるいはどんな代案があるか、工夫しようとします。

また小さな成功は、小さな自信獲得を意味し、これを積み重ねることが、これからの治療人生においては大きな自信再び自分の世界を広げられる事につながるはずです。

がん患者とその家族のための実践書